Preferred Pace(個人に固有の快適な動作速度)に関する基礎研究から得た知見をもとに、即興的なダンスや幼児の遊び場面などを対象として、動きのリズム・空間(方向)・フォルム・イメージの観点から非言語的交流プロセスを分析し、他者との相互作用やグループの力動性を踏まえた運動プログラムや評価方法の考案へとつなげています。
Preferred Paceの個人差は大きいが個人内の時間的一貫性が高く、自発的に動作速度を調節する運動場面において心理的動作基準として機能します。遂行時の前補足運動野の血流量が他の速い速度や遅い速度遂行時よりも少なく、個人の良く学習されたやり慣れた速度です。他者と動きを合わせる行為は、この「私」の速度を「他者」の速度に相対させ、自己を調整するプロセスでもあります。この自己調整のありように着目し、ダンス/ムーヴメントセラピーの実践を含め、身体知覚や自己知覚に関する要因と他者との関係構築に関する要因の両方の観点から研究を進めています。